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『ケイマナ』を継ぐもの

『ケイマナ』を継ぐもの

かつて書店には、社会人の「学びたい」を集めた雑誌がありました。 英会話や資格、デザインスクールなど、さまざまな講座が並ぶ ケイコとマナブ。通称「ケイマナ」です。

ページをめくりながら、新しい分野に出会う。 そんな“学びを探す体験”を提供していたこのメディアは、いつの間にか姿を消しました。

では、あの役割はどこへ行ったのでしょうか。 いまのインターネットには、「ケイマナの遺伝子」を受け継いだように見えるサービスがいくつか存在します。

この記事では、ケイマナというメディアが果たしていた役割を振り返りながら、現代の学びサービスの中に残るその系譜を探ってみます。

「ケイマナ」という雑誌があった

かつて書店には、習い事や資格を探すための雑誌が並んでいました。 その代表が、ケイコとマナブです。

英会話、簿記、宅建、デザイン、パソコンスクール。 社会人が通える学校や講座が、分厚い一冊の中にずらりと並んでいました。

「何か新しいことを始めたい」 そう思ったとき、とりあえずこの雑誌を手に取る。そんな人も少なくありませんでした。

学びたい人と、教える側をつなぐカタログ。 それが「ケイマナ」でした。

学びを「探す」という体験

この雑誌の面白いところは、「探す」体験にありました。

最初は英会話を調べていたのに、 ページをめくるうちに、デザインや心理学の講座が気になってくる。 そんなことがよくありました。

検索とは違い、目的がはっきりしていなくても楽しめます。 むしろ「まだ知らない学び」に出会うこと自体が、この雑誌の魅力でした。

一冊の中に、さまざまな分野が並んでいる。 その構造が、偶然の発見を生んでいたのです。

いつの間にか消えた理由

しかし、こうした雑誌はいつの間にか見かけなくなりました。

理由はそれほど複雑ではありません。 情報の探し方が、紙から検索へ移ったからです。

スクールを探すなら、まず検索する。 口コミを読むこともできますし、公式サイトにもすぐたどり着けます。

さらに、学びの場所そのものも変わりました。 教室に通うスタイルだけでなく、オンライン講座や動画教材が広がったからです。

「学校を一覧で紹介する雑誌」という形式は、時代とともに役割を終えていきました。

そしてもう一つ、少し興味深いタイミングがあります。

ケイマナnetが終了したのは 2020年1月31日です。 そのわずか直後に、新型コロナの流行によって社会は大きく変わりました。

オンライン授業、リモート学習、動画講座。 それまで広がり始めていたオンライン教育が、一気に一般化したのです。

そして気がつくと、 インターネット上には「学びの入口」と呼べる場所が、 いくつも生まれていました。

かつてケイマナが担っていた役割を、 別の形で引き継ぐようなサービスです。

では、今は誰が「ケイマナ」なのか

紙の雑誌としての「ケイマナ」は姿を消しました。 しかし、その発想――「学びたい人と、教える人をつなぐ入口をつくる」という役割は、完全に消えたわけではありません。

いまのインターネット上には、かつてのケイマナの遺伝子を感じさせるサービスがいくつか存在します。

オンライン教育としての系譜

その一つが、スタディサプリです。

このサービスは、もともとリクルートの教育事業から生まれました。 紙の情報誌ではなく、スマートフォンやPCで授業を受けるオンライン学習サービスとして展開されています。

特徴はとてもシンプルです。 有名講師の授業を、いつでもどこでも視聴できること。 学校の授業や受験対策を中心に、学習機会を広く提供しています。

ケイマナが「スクール情報を集めるカタログ」だったとすれば、 スタディサプリは「授業そのものを届けるプラットフォーム」です。

形は変わりましたが、 「学びの入口を広く開く」という思想は、確かに引き継がれているように見えます。

個人の先生をつなぐサービス

もう一つ興味深いのが、ストリートアカデミーです。

このサービスは、2010年代に登場したスキルシェア型の学習プラットフォームです。 専門の学校だけではなく、個人の先生が講座を開けることが大きな特徴です。

料理、写真、プログラミング、ビジネススキル。 さまざまな分野の講座が並び、学びたい人が自由に参加できます。

ここでは「学校」が主役ではありません。 教えたい個人と、学びたい個人が直接つながります。

もしケイマナが「スクールのカタログ」だったとすれば、 ストリートアカデミーは「先生のマーケットプレイス」と言えるでしょう。

「ケイマナ遺伝子」は確かに残っている

こうして見てみると、両者には共通点があります。

それは、 学びたい人が、学びの入口を見つけられる場所をつくっていることです。

ケイマナは雑誌でした。 スタディサプリはオンライン授業です。 ストリートアカデミーは講座のマーケットです。

形はそれぞれ違います。 しかし「学びの機会を可視化する」という役割は、確かに共通しています。

そう考えると、ケイマナは消えたのではありません。 単に、媒体の姿を変えただけなのかもしれません。

『ケイマナ』を継ぐもの

かつては一冊の雑誌が、その役割を担っていました。 いまは複数のサービスが、それぞれ別の形で受け継いでいます。

オンライン授業。 スキルシェア。 コミュニティ型の学び。

「学びを探す入口」は、以前よりむしろ増えているとも言えるでしょう。

もし「ケイマナ」を 学びの可能性を見つけるための場所と定義するなら――

その遺伝子は、いまも静かに受け継がれています。